のぶ子、食べたくて食べたくて

こないだ診察に行ってから3日後、のぶ子が転院した。
去年お世話になっていたがん治療の病院にだ。

転院当日はいろいろ検査をするということで、
CT撮ったり、脊髄からなにか取ったりしたらしい。

前、尿検査ができなかったので、
病室で管を入れて尿を取ってもらってた。


担当医から今後の治療についてなどの説明があると聞いてたので、
私は午前中の仕事を終えてから病院に向かった。

妹が朝から転院の手伝いをしてくれてたので、
今回私は話を聞きに行くだけの気楽さ。

といっても、あの腫瘍の様子を見てきた限りはあまりいい説明じゃないだろうなとも思ってた。


病室はとりあえずの個室に入ってて、家族がそろった15時頃、
その場に先生が説明に来られた。

7年前からの病気の変遷とか治療のこと、今回の病名、時系列でメモにしながら説明してくださった。

抗がん剤が効きにくい理由も、あらたな抗がん剤のこととか、治療のサイクルとかもいろいろ。
去年は、先生のメモ書きの字が乱雑過ぎてあまりよく分からなかった。
自分で書き留めたメモも、乱雑で分からなかったから人のことは言えないけれど・・・。

そして、反対に、去年の入院に至った経緯や、既往歴なども聞かれた。

抗がん剤による副作用の中で、母が持病として持ってるものが影響するものもあるらしい。

成人してからはずっと傍にいるわけでもなかったので、
すべてのぶ子のコトを知ってるわけでもない。

私が知りうる限りのことは伝えたと思う。

ああ、そうそう。

抵抗力が落ちることはよく知ってる上で、様々なリスクの話が出たので、
自宅に戻ったときに賞味期限切れの食べ物食べてもいいか?などを思わず聞いてしまった。

普段からのぶ子は賞味期限切れは気にしないし、
カビが生えていても食べたらしまい!って思ってるし、
トイレの衛生面もあまり気にしない人だから気になったのだ。

担当医は笑ったが、私は笑いを取ろうと思ってるわけでもなく、
のぶ子の適当さが心配だったから確認しただけだ。

でも、笑うよね。たしかに。

ふだんの生活がバレてしまった。笑

衛生面はこのご時世、しっかりしてほしいもんだわ。

特に、抗がん剤治療によって免疫力が低下するのが分かってるので、
普段以上に気を遣ってほしいだけ。


ひととおり説明が終わったら、ご家族さんだけ来てくださいと別室に呼ばれた。
父と妹と一緒に小さな部屋に通された。
「前も呼ばれたことある部屋やな」と父。

去年も母のPET検査で見つかった全身の転移の映像を見せられた。
「治療せんかったらあと1年以内に死ぬで」
と言われた部屋だ。

狭い部屋なのに、のぶ子は車椅子で、あと3人と看護師さん1人はパイプ椅子に座ってギューギューだった。

今年なら「密過ぎ!」と怒られそうなぐらいだったな。笑


さて、今年もその部屋に入ったら開口一番、
「かなり難しい状態」だということを告げられた。

治療を終えてから半年も経たないうちにまたがん細胞が悪さをしだしたもんだから、
薬も効きにくいだろうとのこと。

直近の診察時も、薬の効きが悪いと聞いてたが、
1月で治療を終えてからまだ数ヶ月で完全にカラダが戻ってないから
薬を入れたとてうまく効いてくれるかどうか分からないそうだ。

効果もなく副作用だけなら、治療はやめるらしい。その後は、1ヶ月か2ヶ月だとか。


??????????

正直あまりピンとこない。

横に座ってる父に目をやると、聞いてるのかショックを受けてるのか、無反応だった。

抗がん剤治療を受けることで免疫が低下するのなら、
効かないかもしれない治療をするのはどうかなのか?と妹が質問した。

微妙なところなのだ。

効いてくれたら、脚のできものは小さくなっていく。




見るたびに大きくなる腫瘤。

転院する前の晩には痛みが出てきたらしく、
入院当日も痛がってた。

ついこないだまでは、な~んも痛くないと言ってたのに。
とうとう痛みが出たか。


腫瘤の表面を見ると、中から黄色い花のようなものが透けて見えて、
ツルツルとしていたのがボコボコになってた。

ふくらはぎの側面は異様に大きくなって、
元々の静脈瘤までもがはち切れてしまうんじゃないかと思うほどだった。

こんな状態を見たら、とにかく薬が効くのを願って
早く始めてやってほしいと思わずにはいられないでしょ。

入院した1週間はいろんな検査をすることになったらしく、
今日から点滴治療が始まった。


父曰く、ご機嫌で点滴受けてたとのこと。

そして、食欲は衰えてないらしい。

私の顔を見るたび、
「何か持ってきた?」
「食べ物ちょうだい」
と言うのぶ子。

前から思ってたけど、
120歳まで生きられそうなエネルギーを感じる。
本能で生きるオーラが半端ない。

絶対私より長生きするだろう。
そう信じずにはいられないほど食べる意欲に満ちあふれている。

いつも食べたい年頃で、
食欲が衰える様子が全く見られない。

前にお世話になってた病院がよほど居心地がよかったみたいで、
よく食べ、よくしゃべり、ご機嫌でいたみたいだ。

そんな人が、1ヶ月や2ヶ月で、って信じられない。

正直なところ、いのちの炎が燃え上がってるような人が、
「あなた、火が消えそうですよ」と言われてもピンとこないのも無理はないだろう。


ただ、目の前で弱っていくのを見たら
そうは言ってられないと思う。

でも、そんなことで弱るだろうか。
人を押しのけてでも自分が前に出たがるタイプで、
自分が何もしなくても、人が全部自分のためにしてくれるのは当たり前と思うタイプで、
ごめんなさいが心から言えないタイプで、
病気だろうがなんだろうが、自分の好きなものが食べられたら幸せやから
人の言うこと絶対聞かないぞ!っていうタイプで、
すべての中心が自分だってタイプの人なのだ。

思い通りにならなければ癇癪起こす子どものような人なのだよ。

「弱る」
って言葉はのぶ子の辞書にはなかろう。

私の知る限り、たった一度だけ。
去年の治療のときに一度だけ。

それ以外、一度たりとも自分を曲げたことがない。
負けを認めたこともない。


書いてるうちに、なんだか薬がよく効いて腫瘤が小さくなっていくような気がしてきた。

始まったばかりだ。
心配しても仕方ない。

神様はのぶ子のためには動いてくださらなかったとしても、
私のためには願いを聞いてくださるに違いない。

そう思ってしばらく見守ろう。
退院予定されてる日までにいろいろ動けることをしよう。

介護の手、医療の手、どこかの助けを借りながら
私ら家族も進んでいかないといけない。


何がいい方法か。
のぶ子が最後の最後まで、食欲を手放さないようにと願うばかりだ。





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