のぶ子、笑いをとりまくる

のぶ子の入院生活が10日から始まった。

年末どうにかしてこけたとき右肘を骨折したから手術するためだと。

しかし、免疫内科の担当医からは手術はできないと言われたらしい。

そう母から連絡があり、家族は
「なんでやねん!」とモヤモヤしていた。

そんなとき病院から電話があって、
先生(整形の)が娘さんと話がしたいとのことで呼び出された。

どうにか都合付けられたのが先週の金曜日だったので
行ってきた。

整形外科の病棟は、
免疫内科のとはなんだか勝手が違う。

整形はケガなどで入院されてる方がいらっしゃる病棟なので
基本お元気な方がいらっしゃる。
お見舞いに来られる方も多いようだ。

そのせいか、のぶ子だけは外からの菌をもらわないようにとマスクをさせられてた。

抗がん剤治療をしていると免疫力が低下するので、
感染症に弱いらしい。

いつもマスクなんてしない人がマスクをして、
帽子をかぶってベッドに横になっていた。

それでも相変わらず元気そうに見える。

自分は定位置から動かずに人を動かすのが得意なのも変わりなく、
そして、わがままを言うのも変わりない様子だった。


先生との約束の時間は19時半以降。

早めのに行こうと、19時過ぎには病室に到着してたので、
母の様子を見たり聞いたりして、時間を過ごしていた。そのとき、

のどが渇いたというからベッドの頭のほうを少し起こしてやり、
ストローで水を飲ませる介助をした。

右腕は折れてるし、左手はがんの後遺症が残っててうまくものをつかめないからだ。

以前食いつかれるかと思うような飲み方、食べ方をしてたので、
慌てずゆっくり飲んだらいいよと声をかけながら水を飲む様子をうかがった。

前回とは違って、少しゆっくり飲めるようになったみたい。

だれも取らないってことが分かったからか。
助けてもらわないと飲めないってことが分かったからか。

まあ、ともかく変化はしてるなと思いながら
コップの水を足すためにとテーブルでごそごそしてたら
急にのぶ子が声を上げた。

「マスクが、マスクが!」

(。´・ω・)ん?って思い後ろを振り向くと、
のぶ子のマスクが鼻のところで縮まってとまってた。

クリスマスにトナカイのコスプレする人が鼻に真っ赤なボールをつけてるみたいに、
のぶ子の鼻の上には白いマスクがボールみたいに丸まってついていたのだ。


ぶっ!あははははははははは!爆笑
なにしてるん!笑笑笑

マスク、そこ!?笑


その姿がおかしすぎて病室内だというのに大爆笑した。

思わず、
お母さん、写真撮っていい?笑
と聞いてしまったほどだ。

SNSにこそアップしないけど、
ご機嫌ショットとして保存しときたいほどだった。


今でもその姿を思い出すと笑いがこみあげて止まらない。


不自由な左手でマスクのゴムを耳にかけたまま顎におろし、
水を飲んだあともとに戻そうとしてゴムがねじれ、
マスク部分が広げられずカタマリになっちゃったんだな。

それがまたうまく、鼻のところに乗っかったのだ。

わざとじゃないにしてもなんであんなに面白いことになるのだろうか。

水の飲み方もそうだったし、
私が持ってた大事な書類を取り上げて読んでるふりをするし
(理解はしてないそうだ)、
笑えと言わんばかりのことをする。


私が子どものころやっぱり面白くて笑ったら、
思いっきりぶたれた。

真っ赤に腫れ上がるほど叩かれた。

今はそんなことはできないけれど、すぐキレる「危険な」母だったのだ。


介護申請で来られた認定士さんに、
最近怒りっぽくないですか?と聞かれたときも、
昔のほうが急にキレてましたねとしか答えられなかったもの。

人によっては、そういうこともあるらしい。

介護度が進んで、急に怒り出して介護士さんに手を出す人もいると聞いた。

のぶ子も看護師さんをぶちのめしたいようなことを言ってたけど、
体がついてこないし、一応その時は我慢したらしい。

「怒り」の素質は健在なんだろうね。

元来のとぼけたところが今は前面に出てるのかもしれないけれど。
だから、昔ほどは怒りっぽくないと答えざるを得ないのだ。



「介護」って家族にとってほんとにしんどくて、
これからどうなるのかと不安ばっかりになり、
それに押しつぶされそうになる。

母とふたり暮らしの父にとっては一番不安な要素であるのだ。

自分より先立つのは悲しいしイヤだけど、
自分が今後介護をし続けられるとは思えない。

だって、父の方が年上だから。


新しいことを記憶させることがだんだん困難になってきて、
それでも仕事のことは忘れずにがんばってる父。

のぶ子との出会いのことや自分が就職して頑張ってきたことは鮮明に語れるけど、
昨日伝えたことを記憶に刻むには時間がかかる。

「ほんま、あいつは手がかかる」

そう言いながらも、毎日のぶ子のお見舞いに通っている。


退院して家で過ごしていたとき、
のぶ子は認知症になったのかと心配していた。
それぐらい受け答えがおかしかった。

でも、入院したら看護師さんが何度も足を運んで声をかけてくださるからか
だいぶ意識がはっきりしていた。
のぶ子にとっての「日常生活」に戻ったからかもしれない。

父みたいに、自分の今後については全く考えていない。
なすがまま、誰かが自分のためにうまくやってくれるままに気ままな生き方。
だって、とってもお気楽な人だから。

お母さんたら、長生きするよね。
120歳ぐらいまで生きるんちゃう。
よかったね、お父さん。

ふたりに向かってそう言って笑った。
のぶ子からは間違いなくものすごい生命力を感じるから。

(そうなれば、私の方がお先に!っていってしまうだろうね)


父が頭を抱え込まないでいいように、
なるべく笑って明るい雰囲気にする。

複雑な父心が分かるから安心させたい。


でもまず、健康な体で長生きしてくれるのが一番。
今更無理でも、心意気を見せるぐらいしないでか。


私はそうでありたい。健康寿命を全うしたい。

だから、今から筋肉をつける。鍛える。
そして、食べ物にも気を付けるのだ。


人はみな老いる。
それならどんなふうに年を重ねていきたいか
自分でコントロールしたいもの。

ただ、暗い顔した人生よりも、
明るく笑って過ごす人生で幕を閉じたいものだ。

人の笑いをとるのもいいけど、
自分自身が笑っていられるように。

両親を見ててそう思う。

目いっぱい楽しめる人生をと。






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