のぶ子、我が道をゆく

のぶ子は77歳だ。もうすぐ78歳になる。

昨今は77歳といえばまだまだ若手になるのだろうか。
本人もおばあちゃんのつもりは全くない。

買い物先で見かけた白髪のおばあちゃまと同年代ぐらいだねと言うと、
「一緒にせんとって!!」
と怒り出す。

いや、きっと同じぐらいだろうに。

自分はどこかてっぺんから世界を見下ろしてるんだ
と言わんばかりな雰囲気を醸し出してるのだから手に負えない。

そこはやっぱりのぶ子だなと思うのだ。


さて、11月初めに退院して、通院で抗がん剤治療をしているのぶ子。

介護認定は「要支援2」という結果に終わり、
それに合わせて介護サービスの手配をすることにした。

11月も終わりのブラックフライデー。
翌日のケアマネジャーさんとの打ち合わせのため
この日の午後、実家に帰ることにした。

29日は整形の診察があるとことで病院で待ち合わせし、
帰りに買い物を済ませてのんびり週末の夜を過ごそうと思っていた。

だれもがそうなると思っていた。

ところがだ、お風呂を寝る前に入りに行ったのぶ子がちっとも上がる様子がなく、
私も父も風呂場の扉の前で落ち着かずに何度も様子を伺いに行った。

「大丈夫、大丈夫」
「もうすぐあがるから」

そんな返事を何度か繰り返し聞いたが、
さすがに1時間は長すぎるからと私が扉を開けたら、
お風呂の中でプカプカ浮いていた。

体重が70キロ以上あっても浮力があるから浮いていられる。
ただ、風呂場には手すりがないので、
握力のないのぶ子が掴まるところがなくて自分ではカラダが起こせないでいたのだ。

意識はあって、
ただ上がれないようだったから手を貸して引っ張り上げようと思ったら、
重すぎて上がらない。

膝を曲げさせようとしたら、
すぐにまっすぐに伸ばしてしまうので
お風呂の中で寝っ転がった状態になるから抱えられない。

こりゃあかん!と父を呼んで、
お風呂のお湯を抜いて中から抱え込んで持ち上げようとしたら、
やっぱり重すぎて上がらない。

マジか。

悪戦苦闘して、なんとか浴槽から引っ張り上げられて、
脱衣所まで引きずってはみたものの、
何度か水を飲ませつつ、下着とパジャマを着せるにも一苦労。

入院中から「寝返り」ができない(仕方が分からない)ようで、
膝を曲げてもすぐ伸ばし、足の裏を床に付けて力を入れることさえできない。

致し方なく、カラダの下に座布団を2枚入れて、
私が頭の方を引っ張り、父がお尻の方を押して、
なんとか寝室の布団まで引きずったのだ。

私も父も腰に激痛が走り、3日経った今でも痛みがひどくなっている状態。

のんびりのはずの夜が、激震が走った夜になった。



朝、起きて1階に降りようとしたら、
のぶ子が階段の下に転がってた。

洗面所に顔を洗いに行くとか、2階に化粧しに行こうとしてたようだ。

母はけろりとして、前の夜のことを覚えていない。
「え?なに?」
「お風呂で寝とってん」
らしい。

結局自力では立ち上がることができなくて、
私と父が両側から支えてなんとか洗顔と歯みがきができたという。

ついでだからとふたりでソファまで抱えていったけど、
右足出して!と言うと左足を出し、左足出してと言うと左足を出す。

左ばかり出るので右にギュインと回るだけで進めないから
熱血ものの監督みたいに「ほら右足っ!」と掛け声かけながら時間かけて到着。

パンツとズボンを着替えさせて(それも一苦労)、
お客様(ケアマネさん)をお出迎え。

それが土曜の朝のこと。
この状態では要支援2ではありえんだろってことで、
再申請をお願いした。


それなのに、日曜日に妹家族が心配して実家に足を運んだら、
のぶ子が立ってお出迎えしたらしい。

そして、スタスタと杖をつきながら食べ物に向かって突進していってたとのこと。


なんでや!?あの立ちも歩けもしなかったあれはなんだったの!?

ケアマネージャーさんも、土曜日と月曜日とのあまりの変貌ぶりに衝撃を受けたようだ。

再申請も取り下げしますねと言われた。そりゃそうだ。なんとか歩けてるんだもの。


昔からそうだけど、のぶ子はいつも我が道をいく。

だれかへの気遣いなど必要ない。だれかが自分に気遣ってくれるのが当たり前だから。

とても幸せな人だなと思う。

自分で選べる人生をのぶ子は最短距離で進んできた。
台風のように、周りを巻き込んでなぎ倒して被害拡大させて、
ホントに大迷惑な人なのだ。


父が言ってた。これだけ一緒にいてたら見てやらんと仕方ないって。
見捨てたりはしないのだ。
夫婦の愛というか、なんと言うべきか。

今日もケアマネージャーさんからの電話で、
はじめてのデイサービスを楽しんでいるようで、
お昼ご飯もよく食べてたと聞いたらなおそう思うのだ。

食べられたら幸せ。
人に気を遣わないのが幸せ。

のぶ子のようになりたいとは全く思わないけど、
すべて自分の思うようになる人生は送りたい。

のぶ子にできて、私にできないはずがない。

私は性格上、周りに気を遣いすぎてしまうだろうが、
自分が心地いい範囲で「自分本位」で生きてもいいんじゃないだろうかと思う。


自分が心の底(潜在意識)から望んだことは叶う。

最近そう感じることがいくつかあった。

のぶ子の要支援の結果がちょっと不服に思ったから
もしかしたらカラダを動けなくしたのかもしれない。

そして、このままじゃお父さんがひとりでかわいそすぎる!って思ったから、
元に戻ったのかもしれない。

治療費とかどうなるだろうかと最初心配してたけど、
「なんとかなるんじゃないか」と力を抜いたら、
なんとかなった。

お金の心配をしてたのが、なんとかなるで、心が軽くなった。
だからホントになんとかなるに違いないと思えた。

心配が心配を呼び、
なんとかなるがなんとかなる現状を作る。


願いは叶う。

ブレない自分本位で力抜いて生きていこうさ。



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