のぶ子、糸を通せずくやしがる
のぶ子は短気だ。
さっきまで機嫌良くおしゃべりしてるかと思えば、
急に雷を落とす。
スイッチはどこについてるのか分からない。
背中に付いてるのか、
おでこについてるのか全く不明だ。
もしかしたら着ぐるみ着てて、
その中の人が変わってるのかも。
それぐらい別人のように豹変する。
そんなのぶ子でも、いつもというわけではない。
ご機嫌が斜めになるだけで止まってくれるときもあるのだ。
私が幼い頃、母は内職でクリスマスのオーナメントみたいなのを作っていた。
2歳か3歳ぐらいの頃だろうか、
赤いフェルトを切って、ボンドでサンタさんの顔を貼り付けて、
金色のうねうねのリボンテープを貼るような作業だったように記憶している。
実は私は記憶力がよかった。
今でこそなかなか覚えられないが、
幼い頃の記憶の場面は意外と色鮮やかにはっきりしているのもあるのだ。
その頃の母は、老眼とも縁がなく、
針に糸を通して縫いものをするのもいとわなかっただろう。
50代ではすっかり老眼で、縫い物をするのがおっくうになっていた。
針穴が見えないから、糸を通せない。
あるとき、田舎の祖母が我が家にやってきた。
のぶ子の母だ。
その当時はまだ元気で、背中もピンとした祖母だった。
それでも、もう80歳近くだったんじゃあないかな。
うちで…