のぶ子、救急車のジャマをする

のぶ子は、車の運転がお得意ではない。 のぶ子が車の運転をし始めたのは30代半ばのこと。 とっさの反応が遅れることがよくあった。 ブレーキのタイミングやハンドルを切るタイミング。 注意深くしているつもりのようだったが、 いつも前を向いて進むのでいっぱいいっぱい。 周りのことに気を配るのが遅れてしまうのだ。 あのときもそうだった。 駅前の銀行に行くために、駐車場を探していた。 駅前だということもあり、 車の往来が多くてそのことにも焦っていた様子だった。 後続車が近づいてくるにもかかわらず、 駐車場の入り口はどこだとばかり キョロキョロしながら のろのろと銀行の前を走らせていた。 「そこの車、避けてください」 そんなアナウンスだったか、 後続車が近づいてくる。 救急車だった。 「そこの車」とはうちの車のことだ。 のぶ子は全く気づかない。 自分のことだとは思っていないのだ。 どこか別の世界で起こっていることのように、 完全無視を決め込んでいた。 「お母さん、後ろから救急車来てるから避けなアカンで」 焦って声をかけても、道をゆずるということを思いつかないらしく、 救急車の前をゆっくりゆっくり走らせていた。 「お母さん、道の端っこによけて!」 何度かそう言っている間に、 勝手…

続きを読む