のぶ子、ぶどうに染まる

のぶ子は、秋になるとブドウ狩りに行きたがった。 ブドウ狩りに行くのが生きがいのように見えた。 家から車で20分か30分ほど田舎道を走れば 目的地に到着できたから、毎年恒例行事になっていた。 私もブドウが好きだ。 食べなくてもいいけど、 食べられるとうれしい気持ちになる。 スーパーで買うデラウェアも美味しい。 それとはまた違う、粒の大きな巨峰やベリーAは美味しかった。 最近はもっともっといろんな品種が出ているから きっともっと美味しいと思うものに出会えるだろう。 私が小学生の頃にはそんなにたくさんの品種はなかったんじゃないかな。 ブドウ狩りに行って食べるのは主に 甘みのあるベリーA。 巨峰よりも皮がやわらかくて、 皮をつまむと紫の色素がギュッと出るから、 指先が紫色に染まるのだ。 のぶ子はベリーAをむさぼり食っていた。 一体何房食べるのか?食べられるのか? 早食い競争してるわけでもないのに、 次から次へとブドウの房を切り取り食べるわ食べるわ。 私の爪が紫に染まるとき、 のぶ子の口も紫に染まる。 ニヤリと笑う口元がなんとも不気味だった。 正直、大人になった今でもブドウを何房も食べられない。 何粒か食べては、冷蔵庫に戻すのが常。 せっかく来たからたくさん食べなさいと言われて …

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のぶ子、家出する

のぶ子が家出した。 家出というにはとても短い時間。 私が小学生のときだ。 5年生ぐらいのときか。 覚えているということはきっと、 そんなに幼い時じゃなかったはずだ。 短い時間とはいえ、 「お母さんがいなくなった」 ことが少し怖かった。 我が家がざわついた。 まあそれも一瞬のこと。 きっとあそこにいるだろうってことは父も私もピンときた。 妹は私より3つ下なので、 そのときはまだ幼くて分からなかったかもしれない。 でも、すぐに発見したから怖くはなかったと思う。 原因は分かってた。 父に叱られたからだ。 父に暴言を吐いた。 なんと言ってたかは記憶にはないが、 えらそうな言い方で、 父を小馬鹿にするような言い草だった。 子どもながら、まあすごくえらそうだと思った。 私らがそんな言い方したら手が出るぐらいなのに、 自分はいいのかと思ったような気がする。 温厚な父が怒った。 「出ていけ!!!」 母はちょっとシュンとしてたか、 しおらしくツッカケ履いて家を出た。 2時間ぐらいか、姿を見せなかった。 あれ?ホンマに出ていったんや。 帰ってこない。 最初父に、「お母さん何処行ったんやろ」と聞いたとき、 「ほっとけ!」とかなりご立腹だったけど、 しばら…

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