のぶ子、入れ歯をはずす
のぶ子は入れ歯をしている。
部分入れ歯だ。
何本か歯が並んで、ピンクの歯茎のところに金具がついてる。
むかしむかし、私が小学生のときのこと。
洗面所で歯みがきし、顔を洗った後顔を上げたときだ。
目の前のコップには入れ歯がプラプカ浮かんでいた。
ぎゃーっ!
声を上げた。そりゃ上げるでしょ。
いくつか並んだ歯がごそっとコップの中に入ってたらびっくりもする。
ポリ○ントをしていたのだ。シュワシュワって。
アニメかなんかで、
口の中からごっそり歯がとれるおばあちゃんとかは見たことがあったので
入れ歯については知っていた。
だけど、歯の一部の入れ歯なんて小学生に想像できるだろうか。
のぶ子の入れ歯を見て、初めてその存在を知ったのだ。
先日樹木希林さんの特別番組を見ていたときに
のぶ子と同じような入れ歯を口から出されている映画の一場面が映し出されていた。
樹木希林さんの場合は年老いた母の演技の中でのこと。
のぶ子の場合は、もっともっと若かったときのこと。
しゃべってるとき、時々もごもご口周りが動いていたのはそのせいだったのだ。
のぶ子から学ぶことは多い。
よく言えば、学びの宝庫だということだ。
ほとんどが反面教師なものだけど。
私自身の心にたくさんの傷もこしらえてくれた。
本人にはそのつもりはない。
私はそう受け取った。
子どもにとっては親が世界のすべてだから。
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