のぶ子、声を間違える

のぶ子のことを書き始めてから 気づけばもう4ヶ月になった。 思い出せるときに書いて、 子どもの頃の私を癒やしてきた。 過去の記憶の中にカラーの映像がだいぶ出てきた気がする。 ずいぶん忘れてしまってたこと、 忘れてしまいたかったことがたくさんあるにもかかわらず、 ある程度書き進むとなかなか思い出さないものだ。 過去以上に、「今」ののぶ子に振り回されてる現実。 そこに対面する家族の絆・・・、なんていい話で終わってしまいそうだが、 傷つきたくないから見ないふりをしてきた過去に向き合って、 少し前に進んできてるのも現実だ。 さて、今日の出だしはいつもと違う。 この後はいつものごとくのぶ子の暴れっぷりを書いていこうと思う。 飽きずに読み進んでいただけると幸いである。 ☆☆☆☆☆☆ 私が中学一年生の頃のことだ。 家から徒歩10分ぐらいの中学に通っていた私は、 月曜日の学年集会に出た後、 体育館から教室に戻った。 教室と言っても、2部屋並んだプレハブの教室だ。 その年の1年生はかなり多く、13クラスもあった。 鉄筋の校舎には入りきれないとプレハブが増設されたのだ。 私は1年13組で、体育館横の裏庭に建てられた教室に向かっていた。 友達とおしゃべりしながら目の前に見えてきた教室を認識したとき、 仁王立ちしたのぶ子の姿が見えた。 え? 頭の中に浮かんだハテナマークを払いのける勢いで、 …

続きを読む

のぶ子、カツラをかぶる

のぶ子が脱毛した。 抗がん剤の副作用によるものだ。 入院中から髪の毛が抜け始めたと言っていた。 ベッドの上や、ベッド回りの足元にも 抜け落ちた髪の毛がチラチラ見えていた。 退院した次の日に実家に行ったときは 結構な脱毛だと気づいていた。 しかし、のぶ子たりとて女性の端くれ、 あまり触れられたくないかと娘でも遠慮した。 前回の記事「のぶ子、人をこき使う」でも書いたが、 その日は介護の相談のためにケアマネジャーさんが来てくださる日だった。 だから、私が実家に到着したときは、 カツラをかぶってのお出迎えだった。 リビングのソファに座ってのお迎えだったけど。 ウェーブがかかったショートヘアのウィッグは 妹の義理母のものだ。結構いいウイッグだ。 それがのぶ子の頭の上にちょこんと乗っかって なんだか奇妙なキノコのように見えた。 本人はいたって真面目な顔をしてるから 余計おかしさがこみ上げてきたんだけど、 その感情をやり過ごした。 ケアマネジャーさんが帰られた後、 蒸れるからとウィッグを外した頭を見て、 ちょっと息を飲んだ。 痛々しいという思いと 薬が効いてよかったなという思いが交錯した瞬間だった。 家の中にいる間は自然のままでいる方が楽らしく、 病院でもらったか買ったかしたタオル地の帽子をかぶり 本人は特に気にもせず過ごしていた。 翌日やってきた妹夫婦を迎える時はさすがにウィッグをかぶった。 …

続きを読む

のぶ子、人をこき使う

のぶ子が退院した。 一ヶ月とちょっとの入院だった。 毎日退屈して過ごして、 かわいそうだからと毎日父がお見舞いに行ってた。 これでやっとお父さんが肩の荷が下りたね、 そう言ってた矢先、 今度は父が体調不良で寝込んでしまったのだ。 11月はじめの連休、 母の退院に合わせて介護の相談ができるように 包括センターの担当者に来ていただく手配をしていた。 お昼過ぎまで相談に乗ってもらい、 その後お昼ご飯を食べようとしてたら 父の様子がおかしいことに気づいた。 食欲がなさそうで、ボーッとしていて、 前にも急激に高血圧になったとき(もともとそうじゃなかった)と 同じような症状かもしれないと薬を飲ませたけどよくならず。 何度も嘔吐してやっと落ち着いた。 吐瀉物は私が片付けながら、 退院したばかりの母とぐったりした父だけのときじゃなくてよかったと思った。 翌日には元気にご飯を食べられるようになって一安心。 そう思ってたら、のぶ子は父をこき使い始めた。 「お父さん、リモコン取ってよぉ」 「お父さん、みかん持ってきて」 「お父さん、お茶入れて」 などなど。 自分はソファにでんと座って動こうとせず、 父を呼びつける。 まあ人使いの荒いこと。 父も病み上がりなんだからと私が手を貸したけど、 自分で動けることは自分でやるようにと主治医に言われたこと 全然覚えてないな。 「あんた、ずっとここに居ったらぁ」 と私が…

続きを読む